NITSニュース第86号 令和元年5月31日

教職員同士の支えあいが教師人生の命綱

明治大学 教授 諸富祥彦

「教師のメンタルヘルスを大きく左右するものは、「多忙さ」仕事の絶対量の多さと、「人間関係」です。学級経営や生徒指導などにおける「子どもとの関係」、クレーム対応を含む「保護者との関係」、そして「同僚や管理職との関係」です。学級の状態が悪くなった時に、保護者からクレームが来る。苦しんでいる教師を同僚はサポートしてくれない。こういった人間関係の負の連鎖の中で、こころを病んでいる教師が少なくないのです。

子どもの教室での度重なる「仕掛け」や「挑発」に困惑した教師が助けを求めるような気持ちで保護者に連絡しても、「うちの子が悪いというんですか」「先生のほうにも原因があるんじゃないですか」と容赦ない言葉を浴びせてくる。このような時に管理職に相談したところ「それは君がまだ教師として未熟だからだろう」などと、こころない言葉をかけられることをきっかけに、教師のこころは折れます。

教師というのは「子どもとの関係」「保護者との関係」「同僚や管理職との関係」という「3つの次元の人間関係にかかわる」仕事です。教師の悩みも、「人間関係ゆえに生まれてくる悩み」です。そしてやはり「人間関係で生まれる悩みは、人間関係の中でしか、癒されない」のです。

約20年間、「教師を支える会」の代表として、先生方のカウンセリングをおこなった経験を踏まえて言うならば、学級の荒れや生徒の反抗、保護者からのクレームなどによって教師のこころが傷つくことがあっても、「同僚や管理職との人間関係」です。
さまざまな問題を抱えていたとしても、「同僚や管理職との関係」が、支えになっていれば、(また早めの投薬治療などを受けていれば)休職から退職という最悪の道は避けることができることが多いのです。

「弱音を吐ける職員室」「支えあえる職員室」づくりが何よりも大切です。
同僚の先生が悩んでいるように思えた時は、アドバイスよりも、「気にかけること」「話を聴くこと」が大切です。実際のところ「どんなアドバイスをおこなうか」はあまり重要ではないと言ってもいいでしょう。

それどころか、「いいアドバイスをしよう」という姿勢は、悩む先生をさらに追い込むことになりかねません。益がないどころか、有害なのです。
もしもすぐにアドバイスをしてしまうと、うつ傾向のある教師は「あぁ、面倒くさがられているんだな」と感じます。「こんなアドバイスをもらったけれども、とてもそれに応えることはできない。私はやはりだめだ」と余計に落ち込んでしまうかもしれません。

では何が大切か。
気にかけてさしあげること。「最近どうですか」などと、声をかけてさしあげることです。

そして、こころを開いて話をしてくれたら、とにかく「話を聴くこと」です。あたたかい雰囲気で、うん、うん、とうなづきながら、話を聴いてさしあげることです。
そのことを通して「私は、大切にされている」という思いが育ちます。
これが、うつ傾向のある先生にとって何よりも大きな力となります。

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