NITSニュース第93号 令和元年7月19日

人権教育と総合的な学習の時間、特別活動の関係

東京学芸大学 准教授 林尚示

1 はじめに

私は、文部科学省「学校教育における人権教育調査研究協力者会議」委員、「東京都教育委員会いじめ問題対策委員会」委員などをしています。 また、大学では教員養成をしています。担当しているのは総合的な学習の時間や特別活動の指導法などです。 そのため、ここでは、担当している科目にどのように人権教育を活かそうとしているか述べます。

2 人権と人権教育

人権は、「人々が生存と自由を確保し、それぞれの幸福を追求する権利」(人権擁護推進審議会、平成11年)と定義されています。

この定義は、国連の「人権は、人種、性別、国籍、民族、言語、宗教、その他の身分にかかわらず、すべての人間に固有の権利です。人権には、生命と自由への権利、奴隷制度と拷問からの自由、意見と表現の自由、労働と教育への権利、その他多くの権利が含まれます。 (Human rights are rights inherent to all human beings, regardless of race, sex, nationality, ethnicity, language, religion, or any other status. Human rights include the right to life and liberty, freedom from slavery and torture, freedom of opinion and expression, the right to work and education, and many more.)」という定義を受けています。

日本では人権というと1つの内容と捉えがちですが、実は人権は、複数の権利の集合体です。 そして、人権教育は「人権尊重の精神の涵養を目的とする教育活動」(人権教育及び人権啓発の推進に関する法律第2条)と定義されています。

世界の様々な地域と日本の環境の違いもあり、学校教育で取り扱う人権の内容には特徴があります。 総合的な学習の時間や特別活動を例としてどのような権利に着目されているか調べてみました。

3 人権教育と総合的な学習の時間の関係

「中学校学習指導要領(平成29年告示)解説」によると、総合的な学習の時間では、障害者の権利と情報の作成者の権利について言及があります。障害者の権利については、「障害者の権利に関する条約」に掲げられたインクルーシブ教育システムの構築を目指して、障害の状態や発達の段階に応じた指導や支援の必要性が指摘されています。情報の作成者の権利については、他者の作成した情報を参考にしたり引用したりする際に留意することが必要とされています。

4 人権教育と特別活動の関係

総合的な学習の時間と同様に、「中学校学習指導要領(平成29年告示)解説」では、特別活動でも障害者の権利についての言及があります。根拠となっているのはやはり「障害者の権利に関する条約」です。生徒の自立と社会参加を一層推進することを目指しています。実はこれは、全ての教科等で共通で、生徒の一人一人の教育的ニーズに応じたきめ細かな指導や支援が求められています。

5 おわりに

日本の学校教育での学習指導では障害者の権利に焦点化されがちな人権教育です。しかし、国連の定義をたどると、人種、性別、国籍、民族、言語、宗教などを理由として人間としての権利が制限されないという考え方が基盤となっています。「学習指導要領」やその解説に準拠しつつ、国連の定義も意識して、人権教育を進めていけるとよいと考えています。

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