NITSニュース第115号 令和元年12月20日

困っている子供の学びを支えるための校内体制整備の重要性

文部科学省初等中等教育局特別支援教育課 特別支援教育調査官 田中裕一

学校という場所の為すべきこと、教師という仕事は、子供が学習や友達関係などの学校生活の中で、困っていることがあれば、手をさしのべることだと思っています。 その際、困っている子供の障害の有無によって手をさしのべるかどうかを判断することはないでしょう。 その大前提を読者のみなさんと共有させていただいた上で、話を進めさせていただきたいと思います。

学校生活の中で困っている子供の中には、当然ながら、発達障害を含む障害のある子供もいます。 学校が知っている場合も知らない場合も、また気付きがある場合もない場合もあります。 保護者・本人が知っている場合も知らない場合も、気付きがある場合もない場合もあります。

文部科学省が平成24年12月に公表した調査(「通常の学級に在籍する発達障害の可能性がある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」)によれば、通常の学級に発達障害の可能性のある子供が6.5%在籍している可能性があります。 また、高等学校においては、2.2%という数字があります(「高等学校における特別支援教育の推進について(高等学校ワーキング・グループ報告)」平成21年8月)。 そこから言えることは、全国のどの学校園の、どのクラスにおいても、障害のある子供が在籍している、という前提で対応を検討する必要がある、ということです。

障害のある子供が困っている場合の対応方法は、これまで培ってきた方法でうまく対応できる場合もありますが、うまくいかない場合もあります。 うまくいかない理由は、私が相談を受けた事例から考えると、多くの場合、大きく3つに分けることができます。 困っている原因を含め子供の実態把握の読み違いと対応方法の選択間違い、その対応方法がうまく実施できていない場合です。 このようにうまく対応ができない状況を打破していくために、そして困っている子供に気付くために、大きく困る前に対応するために、障害のある子供が在籍していることを前提とした学校園の体制作りが重要になってきます。

今回のセミナーでは、その体制作りのヒントとして作成されたガイドライン(「発達障害を含む障害のある幼児児童生徒に対する教育支援体制整備ガイドライン~発達障害の可能性の段階から、教育的ニーズに気付き、支え、つなぐために~」平成29年3月公表)の理解や特別支援教育に絡む学習指導要領を含む制度に関する講義と、学校園のよりよい体制作りを支えるために、教育委員会ができる仕組み作りについて協議を実施しました。

このガイドラインは、設置者である都道府県や市町村教育委員会等や学校園長、特別支援教育コーディネーター、学級担任、通級担当教員、特別支援学級担任、養護教諭等の基本的な役割などが示されています。 その役割の中でも、個別の教育支援計画や個別の指導計画の作成と活用やそれを基にした情報共有や引継ぎの重要性が強調され、その際の留意事項や具体例も記載されています。

また、校内委員会や外部の専門家の活用にも触れられています。 例えば、困っている状況、その子供の実態がわかったからといって、うまく対応ができるとは限りません。 その際、校内の教職員の専門性を活用するための校内委員会やケース会議を実施することが考えられます。 他にも、特別支援学校のセンター的機能、発達障害者支援センターや放課後等デイサービスなどの福祉分野、心理士や作業療法士、理学療法士、言語聴覚士などの資格を持つ人の専門性を活用することも考えられます。 このような内容が書かれていますので、ぜひ一度お読みいただければと思います。

後半のグループ協議では、6~7人のグループに分かれて、各自治体の学校園の校内体制を支えるための制度や研修などの取組を共有しながら、今後、何ができるかについて協議を行いました。 グループ内では他の自治体の取組の具体を聞く場面が多く見られ、自分の自治体の取組を整理したり、他の自治体の取組を知ったりすることができました。 他の自治体がどんな取組をしているのか、意外と知らないもので、その取組が自分の自治体が抱えている課題の解決に繋がるヒントになりました。

最後に、講師でもある筆者から、他の自治体の取組を共有することの重要性や、教育委員会の取組は学校現場と子供と保護者に繋がっていることの意識、PDCAサイクルによる見直しの大切さなどについて、お伝えさせていただきました。 加えて、心と体の健康を第一にしていただいて、それぞれの自治体で少しでも前に進むために取り組んでほしいことをお願いしました。 読者のみなさんも多忙な業務の毎日かと思います。心と体の健康を第一にしていただいて、障害のある子供を含めたすべての子供の教育を少しでもよいものにしていただければ、と思います。

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