NITSニュース第119号 令和2年2月7日

教育の情報化を推進する人材の重要性

横浜国立大学 教授 野中陽一

「学校教育の情報化指導者養成研修」が最初に開催されたのは2011年11月ですから、10年継続して実施されていることになります。

この研修の目的は、
1)学校教育の情報化に関する専門的知見を活用して組織的な取組を推進する力
2)学校、地域の教職員の専門性向上を推進する力
を修得した指導者の養成を図ることされています。

そして、「受講者本人のスキルアップのみを目指すものではなく、各地域において、本研修の内容を踏まえた研修講師等としての活動や、各学校等へ指導。助言等が受講者により行われること」が求められています。

この研修は毎年プログラムが見直され、年に1回、あるいは2回の開催、4日間、5日間の開催と変遷を重ねて来ました。 2020年度は1回の開催で、1月27日から1月31日の5日間実施され、教育委員会関係者71名、学校関係者等54名、合計125名が参加されました。

プログラムでは、教育の情報化に関する施策、ICT活用、情報活用能力、プログラミング的思考、情報モラルの育成、校務の情報化等の内容を体系的に理解することに加え、研修の最後には私が担当する「学校教育の情報化推進のためのICT戦略づくり」において先進事例を聞き、教育委員会や学校で教育の情報化をどのように推進すれば良いかについて、各地域、各学校の実態を踏まえ検討し、発表する時間が設定されています。

このプログラムは、英国の管理職向けプログラム(SLICT=The Strategic Leadership of ICT)を参考にして設計されました。 2003-2007年に年に人事権と予算権を持つ英国の校長の40%が受講し、電子黒板が一気に学校に導入され教育の情報化を加速したこのプログラムを、日本のシステムに合わせて教育委員会の担当指導主事や学校の情報主任を対象とするものにアレンジしたのです。

2009年度補正予算で行われたスクール・ニューディール構想では、地上デジタルテレビ(電子黒板を含む)、教育用・校務用コンピュータ、校内LAN等の整備が行われましたが、自治体の学校ICT環境整備への取り組みに温度差があり、結果的に地域格差が生じたと言われています。 この原因の一つは、学校教育の情報化を推進する人材が不足していたことだと考えられます。 現在、GIGAスクール構想が進行中ですが、この10年で少なくとも1200名以上いるはずの受講者には、ぜひ活躍していただきたいと思います。

しかしながら、教育委員会の一員として情報化を推進するのは容易なことではありません。ネットーワークの整備、機種の選定等、ハードウェアに関する知識、子供たちが利用するアプリケーションや統合型校務支援システムの知識が求められる上、首長部局に莫大な予算の必要性を説明し、確保しなければなりません。 先を見通した教育の情報化ビジョンの策定、それを推進する教育委員会、学校、外部組織と連携した体制づくり、普及のために必要な教員研修や実践研究の企画実施、情報セキュリティへの対応等も求められます。学校内での情報化推進も同様です。 以前は、情報技術に強い教員が情報化を担当するという名目で、機器の管理や修理等にも対応せざるを得なかったようですが、働き方改革の取り組みの中で、教員が担うべき業務とICT支援員の役割が明確となり、情報活用能力育成のカリキュラム・マネジメントや校内研修等、本来の役割を果たすことが求められようになりました。

教育の情報化を推進する人材は教育委員会にも、学校にも必要であり、連携、協力することが大前提です。さらには学校外の組織や人材との連携も教育の情報化の推進には不可欠です。 「学校教育の情報化指導者養成研修」も学習者一人1台の情報端末活用を前提にしたプログラムに移行すると同時に地域や学校の情報化を推進する人材に求められる資質・能力の育成にさらに対応した内容とすることが求められるでしょう。

最後に、教育長や校長等の管理職にもこうした研修の一部でも実施することが教育の情報化を推進する上で極めて重要であることも申し上げたいと思います。

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