NITSニュース第145号 令和2年10月2日

災害時の避難施設となる学校が受ける影響

東北大学災害科学国際研究所 教授 佐藤健

学校施設は、災害時に緊急避難場所や避難所として市町村から指定されることが多く、確かに公的な防災資源であると言えます。 一方で、命をまもるための機能を果たした後は、教育するための本来の機能にできるだけ早く戻すことが求められます。 ただし、避難所等を指定するのは市町村長であり、市町村の考え方の違いにより学校が受ける影響に大きな差が生じます。

例えば、A市では、大雨の際の緊急避難場所を兼ねた避難所の開設情報として、浸水想定エリア内に立地する学校については、2階以上や3階以上という付帯条件付きの避難が呼び掛けられます。 この場合、避難所は体育館ではなく初めから校舎利用が前提となります。体育館は浸水の可能性があるため、むしろ開設はされません。

B市では、A市のような付帯条件付きの避難を計画していないため、浸水想定エリア内に立地する学校であれば、緊急避難場所として市が開設することはありません。 一方で、洪水の水が引いた後の避難生活のための避難所として位置付ける場合があります。 この場合は、学校以外に緊急避難していた住民が後から学校に移動してくれば、やはり学校施設を開放することになります。

C市では、大雨の際の緊急避難場所を兼ねた避難所として、市立学校を予め指定していましたが、令和元年東日本台風では、公民館機能を持つ公共施設が避難所となり、一つの学校も避難所となりませんでした。 一方で、上記のA市では、開設された避難所のほとんどが学校であったことに加えて、はじめから校舎を避難空間として開設された学校も少なくありませんでした。

学校の早期再開を考えると、避難者への開放空間をできるだけ少なくすることが理想です。 しかし、地域の防災資源として学校施設が有効な状況があるとすれば、予め決められたルールに従って開設と運営を行うことが求められます。 D市では、学校施設の鍵管理に関して、学校と行政、地域関係者による事前協議に基づいて協定を締結し、休日や夜間であっても鍵を所持している地域住民が学校を開錠できるようになっています。

新型コロナウイルス感染症の影響では、3密を緩和する避難空間の在り方として、校舎の開放エリアの拡大に対する社会的要求が高まっています。 妊産婦や介護が必要な高齢者、インフルエンザやノロウイルスといった個別の対応が必要な避難者を収容するために、校舎のどの部屋を部分開放するかについて先行して検討してきている学校の知見を学ぶことができます。

実際の避難所の開設や運営についても、「○○マルマル学校避難所運営マニュアル」を学校と地域関係者とが連携した「避難所運営委員会」が策定している学校もあれば、そのような防災上の連携の枠組みがない学校も少なくありません。 東日本大震災では、学校の教職員が学校に一日も宿泊しないで済んだ学校がありました。 地元町内会がこの学校の体育館を避難所とした開設から運営までを円滑に行うことができたためです。 この事例のように、学校のために一肌も二肌も脱いでくれる地域住民を増やすことが重要であると考えます。

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