NITSニュース第167号 令和3年5月14日

学び合う場としての学校に

独立行政法人教職員支援機構 理事長 荒瀬克己

4月に理事長に就任した荒瀬克己です。どうぞよろしくお願いいたします。

わたしは長らく高等学校の教員を務めていました。 当時お世話になった元日本弁護士連合会長の中坊公平氏から、「現場に神宿る」という言葉を教わりました。 物事はその現場で起きているのだから、現場に立脚することが必要だという意味でしょうが、学校に当てはめて考えてみると、現場でなければ分からないものがある、現場についてしっかり知って取り組むことが重要だ、現場には、「神」とも呼ぶべき魅力がある――そういった意味ではないかと受けとめています。

教育の現場である学校が、そこに集う子どもたちにとっても教職員にとっても魅力的な場所になるよう、現場についての知見を深め、さまざまな支援に取り組むことが教職員支援機構の務めであると考えています。

いま学校には、多くの課題があります。 関係者の努力は重ねられていますが、「働き方改革」も、必ずしも順調に進んでいるとは言えません。 しかし、子どもたちの学びをないがしろにすることはできません。 このような状況の中で、教職員それぞれの悩みが深まっているのではないでしょうか。

どのようにして乗り越えていけばよいのか、妙案は思いつきませんが、学校の役割は何なのか、教職員は何をすることが仕事なのかという、基本に立ち返った問題意識に基づいて話し合い、共有し、そして協同して取り組むことが重要ではないかと考えます。

新学習指導要領で重視されるカリキュラム・マネジメントについて、「目標-現状=課題」という図式を思います。 重要なのは、まず「現状」を把握するということでしょう。 子どもたちそれぞれの学びの現状、集団としての状況、学習環境、教職員の指導の現状、勤務の状況、環境、それに学校を取り巻く状況、保護者、家庭、地域……そういった「現状」を一つひとつ丁寧に見つめ、結び付けたり選び分けたりしながら、しっかりと検討し共有して、そのうえでどのような目標を設定するか。 そして、何についてどのように取り組んでいくか。

現状を把握するためには、一人の目と耳と感覚では十分ではありません。 教職員それぞれが見たもの聞いたもの感じたことを出し合って、多角的に把握し、実態に即した立体的な現状を浮かび上がらせる必要があります。

これは、いわば組織としてのメタ認知です。 個人としてのメタ認知は難しく、わたしも苦手ですが、組織としては可能なのではないかと考えます。 そのためには、思ったことを言いやすい職員室、風通しのよい職場にしていくことが重要です。 その前提として、時間と場を創出する管理職のリーダーシップが欠かせません。 同時に、組織の構成員それぞれが、自分たちの学校をつくっていくという責任感と誇りもまた、とてもだいじであると思います。

1月26日の中央教育審議会答申は「はじめに」において、「一人一人の子供を主語にする学校教育」をめざすとしています。 その実現のためには、一人一人の教職員が主語になることが重要です。 学び合う場としての学校に……子どもたちにとっても、教職員にとっても、そうなっていくようご一緒に取り組みたいと思っています。

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