NITSニュース第170号 令和3年6月25日

子どもの“人生を変える”先生の言葉

宝塚大学看護学部 教授 日高庸晴

36自治体の小中高・特別支援学校の全国の先生方21,634人に、LGBTに関する質問票調査にご協力いただきました(調査実施時期:2019年10月~2020年3月)。 この調査は、2011年~2013年(以下、2011年調査と表記)にかけて6自治体5,979人の先生方を対象にした調査の後続研究として実施しました。 本稿では調査結果の概要をご報告します。

「LGBTについて、授業で取り扱う必要性について」

同性愛について教える必要があると思う74.7%(2011年調査では62.8%)、性別違和や性同一性障害について教える必要があると思う85.7%(73.0%)であり、それぞれ10%程度の上昇であった一方で、実際に授業に取り入れた割合は14~15%程度であり、2011年調査とほぼ同率でした。

「きちんと知ると、子どもとの関わり方が変わる」

出身養成機関(大学の教育学部など)・独学・教員になってからの研修の3つの機会全てで同性愛と性同一性障害について学んだ割合は3.1%、この3つのいずれの機会においても学んだ経験がなかった割合は19.5%でした。 つまり5人に1人は学びの機会が全くなかったことがわかりました。

次に、この学びの状況ごとにデータ分析をしたところ、3つの機会全てで学んだ先生方は明らかに、当事者と思われる児童生徒の存在を認識しており、実際に当該児童生徒との関わり経験があり、授業に取り入れた経験割合も圧倒的に高いことがわかりました。 これらのことから、教育学部の必修カリキュラムにLGBTについて加えることや、現職教員研修により多くの先生方が参加可能な機会を確保することが重要と思われます。

「文部科学省からの通知文書を知っていますか?」

2015年4月に「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」と、2016年4月には「性同一性障害や性的指向・性自認に係る、児童生徒に対するきめ細かな対応等の実施について(教職員向け)」が文部科学省から発出されましたが、それぞれ「読んだことがある」割合は回答者全体で18%程度、校長先生であれば52~54%程度でした。 一方、2017年の「いじめの防止等のための基本的な方針」を読んだことがある割合は57.7%、校長先生では95.2%でした。 2015、2016年の文書は先生方にあまりに読まれておらず、せっかく文科省から通知文書が出されても、読んでもらえないことにはその内容が浸透することはありません。 しかし、いじめに関する内容であれば多くの先生方が読んでおられたことから、いじめに関する文書の中にLGBTについてもより明確に盛り込んでいくことも、情報を浸透させるためには有効と思われます。 その際、LGBTの子ども達はいじめ被害・不登校・自傷行為の経験率が圧倒的に高率であることをお伝えすることも必要なことです。

「子どもの“人生を変える”先生の言葉」

自らの性的指向や性自認に気付いたり戸惑ったりしている思春期の彼らにとって、担任の先生の言葉はとても影響があります。 孤立しがちなLGBTの子どもたちにとって、先生の言葉ひとつで人生が変わるといっても過言ではありません。 この先生ならば自分のことをわかってくれるだろうと信じて、期待して、カミングアウトしてくるかもしれません。 オリンピック代表選手の中にLGBTの当事者は多数含まれ、彼らは活躍と共にテレビカメラの前でカミングアウトすることもあるでしょう。 そういったポジティブな話題について伝えるなど、日々の学校での取り組みや先生のさりげない一言が、重要になってきます。

この度の調査結果の概要はPDFで公開しておりますので、ご覧ください。

また、これ以外の調査結果も公開しておりますのでご一読頂ければ幸甚です。

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