NITSニュース第176号 令和3年9月17日

教師に求められるICT活用指導力

中村学園大学 教授 山本朋弘

現代社会において、ICTに関連する人材育成や需要は大きく変化しています。 既存システム等の開発や保守、ワープロ・表計算ソフトの運用といった従来型の人材に対する需要は減少し、AIやIoT等を用いた技術やプログラミングによる課題解決にも対応できる新たな人材が求められています。 学校現場の教師においても、新たなテクノロジーに対応して、ICTを積極的に活用して指導する能力の育成が求められています。 文部科学省は、教員のICT活用指導力のチェックリストを更新し、学校現場でのICT環境整備の変化に対応してきました。 特に、GIGAスクール構想によって、1人1台端末環境の活用が期待されており、児童生徒のICT活用に関する指導や支援のために、教員のICT活用指導力をどのように高めていくかを検討する必要があります。 また、大学での教職課程においても、ICT活用指導力の向上に関する取組が必要です。 これからの教育を担う教員志望者に対しても、教員としてのICT活用指導力を確実に身に付けるための更なる取組の推進が期待されます。

また、児童生徒1人1台の情報端末の環境をどう活かすのか、教師の授業デザインが大きく関わってきます。 自治体の関係者からは、導入後に教師への研修を充実させたいという相談を受けます。 その際に、関係者が教師のICTスキル向上をイメージされていることが多いのですが、実はそうではありません。 今後求められるのは、教師のICTスキルよりも、むしろ児童生徒の活用を「コーディネート」できる指導力が求められます。

これまで、教師が十分に理解していない機器を児童生徒に操作させたくないという現場の声を聞いたことがあります。 そのような考え方では、GIGAスクール構想には対応できません。 これからは、教師が児童生徒のスキル以上を習得しなければならないという従来の考え方ではなく、コーチングの考え方に立って、児童生徒のスキルが発揮できるよう、教師が伴走しながら支援していくことが求められます。

それでは、GIGAスクール構想に対応した、教員のICT活用指導力を向上させる取組のポイントをいくつか整理します。

①協働による研修体制

教育委員会や教育センター、学校での研修リーダーが1人ではなく、「チーム」でサポートできる研修体制を充実させるようにします。 「チーム学校」で、情報端末の活用研修を展開します。 さらに、教育委員会や研修機関では、研修カリキュラムを広く例示するなど、学校が必要に応じて情報を収集できるよう支援することが必要です。 また、地域や学校の実情に合わせて、ICT支援員や大学、企業等の外部人材を有効に活用し、研修リーダーとともに研修を支援することが求められます。

②活用のアイディアを出し合う

実施内容や受講者の特性に応じて、グループ演習や模擬授業、受講者同士の情報共有等、研修形態を工夫して、ICT活用のアイディアを出し合って共有できるようにします。 受講者が協働して研修プログラムや教材の作成を行ったり、成果や課題を発表し合ったりする機会を設けると効果的といえます。 個別学習、対話的な学習でのICT活用の意図など、授業をデザインできる能力をお互いに高め合う場面を設定することが重要です。

③管理職のリーダーシップ

学校の全学級で1人1台の情報端末を有効に活用していくには、管理職のリーダーシップは絶対に欠かせません。 自治体や教育委員会は、学校の管理職が学校CIO(最高情報責任者)として推進できるよう、従来の管理職研修に教育の情報化の視点や内容を盛り込んでいくなどの取組が求められます。 管理職には、学校全体の活用を推進するリーダーであるという認識を持ってもらうことが極めて重要です。

これからの教師に求められるICT活用指導力は、単にICTを操作でき、授業で活用させる能力だけではありません。 必要なのは、個別最適化と協働的な学びの一体的な充実を図ることができるよう、教師が伴走しながら、児童生徒の学習を支えることができるようにすることです。

今回整備された1人1台の情報端末環境は、令和の学校の標準的な姿(スタンダード)であり、「特別なことではないこと」をしっかり理解して、日頃の教育活動を進めてほしいと思います。

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