令和3年2月5日

NITSニュース161号 講師コラム「With コロナにおける学校組織マネジメントのバージョンアップ」

【今週の目次】

  1. 今週の一言
  2. 講師コラム
  3. 「第4回NITS大賞」審査結果の発表について
  4. オンライン講座「校内研修シリーズ」のご紹介
  5. 研修プロデューサーより
  6. 編集後記

1. 今週の一言

2月4日に、関東地方で春一番が吹いたそうです。 統計を取り始めた1951年以降、最も早い記録だそうです。 まだまだ寒さは続きますが、着実に春の訪れが近づいていることを実感する出来事でした。

今週は、「学校組織マネジメント」に関するコラムを中心にお送りします。

2. 講師コラム「With コロナにおける学校組織マネジメントのバージョンアップ」

滋賀大学 教授 大野裕己

新型コロナウイルス感染症の世界的拡大は、学校教育にも大きな影響を与えました。 学校現場は、情報や見通しを持ちがたい状況(VUCA時代)のなかで、感染予防、授業等指導計画の変更、児童生徒の学び・生活面での課題等への多面的な対応を余儀なくされました。

このような状況下においては、「学校内外の能力・資源を開発・活用し、学校に関与する人たちのニーズに適応させながら、学校教育目標を達成していく過程(活動)」(文部科学省2004年)である、「学校組織マネジメント」の重要性は、一層高まると考えられます。 ただし、これまで概ね「年度単位のサイクル」で、「目標-重点-具体策を演繹的に構想(Pに重点)」する形で現場に普及してきた学校組織マネジメントの様式は、子供の学び・育ちのこまりごと・課題が短時日で生起するWithコロナ期には、有用性の限界・課題を持ちます。 現在のスクールリーダーには、コロナショック期における好取組事例の示唆を踏まえつつ、上記の限界を踏まえた「学校組織マネジメントのバージョンアップ」の視野・行動が求められます。

バージョンアップの方向として、大きく2点を提示できます。

第一は、これまでの「年度単位PDCA」の発想を超えて、絶えず生起する危機(地域の感染状況、児童生徒の学び・育ちの課題)に組織として即応しうる、機動的な経営プロセスの具体化です。 例えば、教育活動に即した教員集団の「実態認識-課題生成-実践化」の課題解決プロセスを組織マネジメントにおいてより重視すること(佐古2006)、あるいは観察(Observe)・情勢判断(Orient)を重視した意思決定・行動(Decide-Act)という、意思決定活動高速化の枠組み(OODAループ(注))を学校組織に適用すること、が考えられます。 もちろん、学校においては、予算管理や対外的説明など、従来のPDCAサイクルが妥当性を持つ部分もあるため、方向性としては機動的経営プロセスを意識しながら、各経営場面での思考の棲み分けが求められます。

第二は、上の機動的な経営過程を実現する組織的条件として、現場第一線の教職員チームの「課題生成-実践化」「情勢判断-行動」を重視する、課題解決型組織を開発することです。 これは既存の校務分掌組織の活用、あるいは目的・期限を特定したプロジェクト組織の設定等として具体化できます。 ここで重要なのは、学校管理職(校長)が、学校の組織的課題の具体的な対応方法までを決めて降ろす「統制型」よりも、現場の教職員リーダーに適切に判断・実践化のイニシアチブを委ねる「分散型」組織づくりの思考に立つことです。 このとき校長の役割・リーダーシップは、コロナ対応において勤務校で大切にする価値や使命を提示・共有すること、教職員チームでの課題解決を重視する校内組織を明確化すること、そのチームでの実践の効果検証と解決パターンの学びを促進すること、得られた現場の成果・知を経営計画等に帰納的に還流・反映すること、に重心が移行します。

今次コロナショックは、従来の経営サイクル(年度単位+Pに重み)の限界・課題と、設置者・他校との横並び意識の複合により、学校の目前の危機への「思考停止」の危険性も浮かび上がらせました。 その克服に向けて、本コラムでは、機動的経営過程の思考及び新たな校内組織運営の構築の二点として、学校組織マネジメントのバージョンアップの方向性を試論しました。 近年、ミドルリーダーの育成・活用や分掌組織の改善に取り組む学校は多く見られますが、本コラムで提示した考え方も含めて、Withコロナにおける各学校レベルの機動的・持続的な組織マネジメントの新しい形態が創出されることが期待されます。

参考文献

3. 「第4回NITS大賞」審査結果の発表について

今年で4回目を迎えた「NITS大賞」では、全国からたくさんのご応募をいただき、計216件の応募が集まりました。 審査を終え、優秀賞10点、審査委員特別賞6点を選出いたしました。

優秀賞

審査委員特別賞

例年は受賞校による活動発表・表彰式を行っていたのですが、今年は新型コロナウイルス感染リスクを考慮し中止としたため、2月2日(ニッツの日)に、当機構ウェブサイトに審査結果を掲載しました。 審査委員長の講評や、受賞校の写真等を含めた動画も掲載しておりますので、ぜひご覧いただければと思います。

多くのエントリーをいただき、ありがとうございました。 3月には、事例集を作成し、当機構ウェブサイトに掲載する予定です。 互いにノウハウや経験を共有することで、各校の効果的な実践に繋げていただければ幸いです。

4.オンライン講座「校内研修シリーズ」のご紹介

ご好評いただいている「校内研修シリーズ」。今週は「研修企画」に関する動画をご紹介します。 (所属名等は撮影時のものです)

5.研修プロデューサーより「幼児教育指導者養成研修の運営を通して」

教職員支援機構つくば中央研修センター 研修プロデュース室 アシスタント研修プロデューサー 新庄直矢

幼児教育指導者養成研修は、特定の教育課題にフォーカスした他の指導者養成研修とは異なり、幼児教育を巡る課題を網羅した研修カリキュラムとなっています。 カリキュラム・マネジメント、特別支援教育、幼児の安全や健康等に関する内容がバランスよく構成されています。

令和2年度は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、急遽3日間のオンライン研修へ移行することとなりました。 オンライン研修の制約を考慮し、研修内容を精選する必要があったため、文部科学省の担当課や講師の先生方と検討を重ね、幼児教育に必要なポイントを押さえたカリキュラムを構成しました。

オンライン研修の特性を前向きに受け止めてくださり、今年度の受講者数は327名と、標準定員の4倍以上の推薦をいただきました。

研修の流れは、幼児教育の重要性と現状、組織を動かすマネジメント、ニーズの高い喫緊の課題、指導計画の作成と保育の展開、学校評価の手法となっています。 この配列は、研修効果を高める上で最善となるよう議論を重ねていただいた結果です。 研修の締めくくりは「研修成果の活用」を配置しています。

当機構が行う研修は、個人の資質向上はもちろんのこと、研修成果を各地域で活用・展開できる指導者の養成を目的としています。 そのため、各地域で研修の企画・立案をしていただくことを想定した講義を最後に設けています。

それぞれの講義では、基本的な考え方や理論だけでなく、各地域における先進的な取組等も紹介しています。 代表的な2つの講義を紹介します。

第2講「幼児教育を推進するための体制整備に向けた自治体の取組事例と幼稚園再開後の工夫と課題」では、教育委員会と県の福祉部局との連携・協働の取組や、コロナ禍の中で遊びを通した幼児の学びを止めないための幼稚園等の保育活動についての事例を取り入れました。 園のホームページを活用した情報の発信、オンラインを活用した同時双方向のコミュニケーション等、幼児に対する支援に加え、定期的な電話相談・家庭訪問等、保護者をサポートする活動にも触れられており、多くの示唆に富む事例を紹介しました。

第5講「幼稚園における『実効性のある学校評価』の手法」では、全日本私立幼稚園幼児教育研究機構が開発した「公開保育を活用した幼児教育の質向上システム(ECEQ:イーセック)」が取り上げられ、興味を持たれた方も多いのではないでしょうか。 これは、5つのステップ・プロセスを通して自園の良さや課題を見つけるとともに、園内のコミュニケーションを促し、同僚性を高める手法です。

当機構としては、従来の研修の在り方が大きく変化した年になりましたが、本オンライン研修を受講された先生方より、「分からない部分を繰り返し聞くことで理解を深めることができた」「自分のペースで受講できた」等のお声をいただき、オンラインの利点を確認することができました。

来年度の研修では、オンライン研修の良さに加え、受講者が双方向で意見共有できる環境を構築できるよう努めてまいります。

6.編集後記

令和2年度(令和元年度実施)公立学校教員採用選考試験の実施状況が、文部科学省より公表されました。 これによると、小中高すべての校種において、受験者数、採用倍率ともに減少していることが分かります。

次世代を担う子どもたちを育てる立場である教師のなり手が不足することは、国の将来に関わる深刻な事態です。 学校現場の労働環境の改善も含め、少しでも状況が改善していくことを切に願います。

来週は「タイム・マネジメント」に関するコラムを中心にお送りします。

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