NITSニュース第21号 平成29年11月10日

道徳科の授業とは

国立教育政策研究所 教育課程調査官 澤田浩一

「徳は身に於いて得るなり。」中国の古典『礼記』にある言葉です。道徳的価値は、観念的に知っているだけでは十分でなく、身に付けていかなければならないものです。人は4歳前後になれば、何が大事かおおよそ知っています。しかし、いくつになっても、特に思春期になれば、行うことが難しくなります。行うことができないのは、実は本当に知ってはいないのだとソクラテスは考えました。「無知の知」を自覚することから始まるのです。道徳的価値を教え込むことはできません。当たり前と知っていることを、当たり前に行うことがいかに難しいことであるか。知情意が分かちがたく結びついた形で、自分自身で気付かなければ、身に付けることはできません。

道徳の内容は、「教師と生徒が人間としてのよりよい生き方を求め、共に考え、共に語り合い、その実行に努めるための共通の課題」です。道徳科の授業を構想する際にまず考えるべきことは、「何を考えさせるか」を発見することです。読み物教材の場合には、教材をきちんと読む。全ての文を矛盾なく、全ての文が意味をもっているように読み、道徳上の問題を把握します。次いで、発問を吟味する。心理を読むような問いから脱却しなければなりません。すっきりとたった一つの正解にたどり着く問いではありません。教師と生徒が行き詰まり、深く考え、生徒一人一人が自分なりの納得解を探せるような問いが求められています。モヤモヤし難しいけれど考え続けたい問い。級友と語り合いさまざまな意見を聴く中で、自己を見つめ、自己内対話が行われます。自由な発言が受容され、互いの個性を認め合い、生徒一人一人の確かな存在感が保証されている温かい雰囲気。抽象的な道徳的価値と具体的な自己の生き方との間を行ったり来たりしながら、生徒一人一人が自分にとって大切なものに気付いていける授業を目指しています。

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