NITSニュース第44号 平成30年6月8日

学校組織マネジメント研修におけるケースメソッドの可能性

九州大学 教授 元兼正浩

学校も「組織」である以上、マネジメントの考え方が必要なことはわかるが、学校は民間企業と同じ組織といえるのか、もし違うとすればどのように「特殊な」組織なのか、そしてそもそもマネジメントとは何をすることなのか、こうした疑問をもって臨まれた受講者も多いことでしょう。

また組織マネジメント研修といえば、ビジョンだの、ミッションだの、ストラテジーだの、SWOT分析だの、PDCAサイクルだのとカタカナや横文字が飛び交い、「欧米か!」と突っ込みをいれたくなる、しっくりと五臓六腑に落ちてこない、言葉が上滑りして現場に届かず役に立たないといった印象をもつ方も多いことでしょう。

筆者の組織マネジメント研修の基本はわが身、わが校を組織の視点から改めて振り返るということを第一の目標として展開しています。組織の一員としての私は周囲から期待される役割を十分に演じられているのか、そしてわが校は平時、有事の際にそれぞれ十分に組織として機能しているのかといった、ドキドキして身につまされる問いかけをワークシートや演習を通じて投げかけ、各自が自身のこれまでを振り返っていきます。

そうした中で自分自身の存在理由(プレゼンス)を自覚していくことが組織マネジメント研修の入り口でありまたゴールでもあります。したがって、校長の~、副校長・教頭の~、主任主事など職位によって組織マネジメント研修はおのずとちがった内容になっていきます。

さらにまた、学校評価、人事考課、カリキュラム・マネジメント、地域との協働・連携などのテーマはその延長線上の派生に位置し、内容こそ違え、同根となっています。

その意味でベーシックな部分を担うのが組織マネジメント研修となります。実はこれが曲者です。ベーシックとはいえ、組織とは、マネジメントとは、学校とは、校長とは……と概念定義をレクチャーしてもあまり意味がありません。組織の大きさも形も異なる学校に勤務している受講者はそれぞれの経験のなかで、イメージを作り上げてしまっています。それもかなりの振れ幅で。したがって、ギャップが生じるのは必至です。また、概念を丸暗記したところで、明日の実践にはほとんど役に立ちません。

グループを作り、誰かの学校を取り上げても、そのことが受講者に十分響くとは限りません。むしろ重要なのはバーチャルとリアリティの共存です。映画・シンゴジラの世界のように。ケースメソッドの教材はあくまでフィクションとしてバーチャルなのだけれどもとことんリアリティを追求するという絶妙のバランスの上にある世界観を実現しています。

特定の誰かの学校の話ではないのだけれど、うちの学校でも十分に起きうるケース、いつ起きてもおかしくないエピソード、こんな管理職いるよねという「あるある感」。そうしたエピソードは本来、先生方一人ひとりがお持ちのはずで、現場経験のない筆者はケースを介在して出てくる先生方のディスカッションにわくわくしています。

正解が1つだけでないのがケースメソッドの醍醐味で、さまざまな条件の下で考えうる許容解をどれだけ一緒に導けるか、今後リーダーとして判断・決断する際の「引き出し」を増やしていけるかがポイントとなります。その意味ではケース自身が筆者の手元を離れて先生方の集まりの中で豊かに育っていくことを楽しみにしています。

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