NITSニュース第59号 平成30年9月21日

スマホ時代の子どもたちのために

兵庫県立大学 准教授 竹内和雄

「LINEなんて、この世から消えてなくなってほしい」

先日、ある県の教員研修会で、小学校の先生(4年担任、女性50代)が思わず口にされた言葉です。男子2人(A君とB君)が殴り合いの喧嘩をしたので、放課後に指導したそうです。すぐにお互いが納得したので、「仲直りしておきなさい」と2人を帰したそうです。

しかし翌朝、教室に行くと、2人がまた殴り合っています。昨日、解決したと思っていたので驚いて事情を聞くと次の通りでした。昨日の放課後、B君は習い事があるので、「あとはLINEで」となったそうです。以下、LINEの再現です。

B君「今、ひま?」
A君「遅い。もう9時じゃん」
B君「消しゴム、ごめん」
A君「もういいよ」

こういうLINEでのやり取りがあって、次の朝、B君がA君にいきなり、殴り掛かり、殴り合いになったそうです。何があったかわかるでしょうか。なぜB君が怒ったか、考えてみてください。

B君が怒ったのはA君の「もういいよ」という言葉です。もちろん、A君は、「もう怒っていないから、許してあげる。もう謝らなくてもいいよ」くらいの意味で書いたのですが、B君は、前の言葉から察して、「お前となんかかかわらない、もういいよ!」の意味だと勘違いしました。怒ったB君は翌朝会うなり、A君に殴りかかったのです。

私たち大人は呆れてしまいますが、こういうトラブルが日本中で起きています。しかも、スマホ所持の低年齢化に拍車がかかっている昨今、これまで以上に頻発している印象です。

「禁止・制限」から「賢い使い方」へ

今回、博多と仙台で「いじめ」についての研修会の講師を務めさせていただきました。今回は「ネット」に焦点を当てた内容にしたのですが、とても熱心な先生方から強い刺激を受けました。先生方の分野への関心は年々高まっていると感じています。

これまで、学校で行われてきたネットに関する指導の多くは、「禁止」「制限」でした。危険やトラブルが多いので当然だと思います。私もそういう研修を構成していましたが、最近、「禁止だけでは限界があり、賢い使い方を教えたい」「子どもたち自身に正しい対処方法を考えさせたい」という声が先生方から多く聞かれました。

この夏、私が関西で行った約2万人の調査では、スマホ所持率は、小1ですでに2割を超え、高学年になるとほぼ5割です。確かに禁止だけでは無理で、しかも低年齢化がますます進んでいくことが予想されます。

正直に告白すると、私が博多や仙台の先生方のために用意した内容は、先生方の要望には十分に応えられなかったと反省しています。私は子どもたちとスマホ等について議論する「スマホサミット」を年間30回以上コーディネートし、アンケートやインタビューで年間5万人以上の子どもたちの現状を調査しています。この種の問題で、私はかなり子供の現状をわかっているつもりでした。しかし、私の理解は「一般的」で、それぞれの先生方が「現場」で直前しておられるのは、それぞれの学校、地域ごとに大きく異なっていました。すべての場所でオールマイティーに効果があがる内容は残念ながら、今はまだありません。模索段階です。

「荒野行動」「ティックトック」「フィッシャーズ」「ストーリー」……。子どもたちが口にするネットに関する言葉は日々変化します。今回の研修は、先生方と一緒にこれからの方向性について、ともに考える形に期せずしてなっていきました。子どもたちの変化に私たち大人がついていくのは至難の業です。大人が教えるのではなく、子どもたち自身が自分で使い方を考える。そういう方向を目指していかなければならないと痛感しました。

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